北海道 ツーリングレポート 2000 夏

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第 5 話 : オホーツク


岩礁帯の浅瀬でハルを擦らないよう、そろそろと進む。
海底には昆布がびっしりと生えていて、手を伸ばせば掴み採れる。
試しに千切って生のまま口に入れてみると、意外にもシャキシャキとした歯ごたえで美味かった。

奇岩の間を猛スピードで縫って飛ぶ海燕に驚かされる。
群でグルグル飛び回っていて、その進路は予想がつかない。
敵だと思っているのか、それとも歓迎しているのか、一見、楽しそうに飛び廻る。
はるか沖を通る観光船「おーろら号」から好奇の目でみられているのを感じる。

アブラコ湾

古びたコンクリートの桟橋がぽつんとある。
奥には階段が台地の上に伸び、20m 程上に観測施設と思われる小屋。
アブラコ湾だ。
波はまったくない。静かだ。鏡のような水面にフネを滑らせ上陸。
ちょうど12時だ。パンとカロリーメイトの簡単な昼食をとる。

唐突に小型漁船のようなフネがやってきた。桟橋に家族連れを下ろす。
20分ほど磯場で遊んだ後に去っていったが、
観光客を乗せて来た業者なのか、自前のフネなのかはわからなかった。

小屋の横まで上がってみる。植物を踏まないように気をつけて歩く。
草原のはるか向こう、山の付け根の灯台。振り返れば蒼く広がる海。
「知床岬」の石碑が転がっていた。地震で倒れてしまったというのはこれだろう。

さて、ここで重大な決断をしなければならない。
コトは単純。「行くか戻るか
ウトロまで 40km。相泊に戻れば 20km

日差しは真夏。今朝の天気予報を信じれば、しばらくは天気は持ちそうだ。
一番心配なのはブリアンの体調だったが、これもどうやら持ち直したようだ。
3人とも「行ける!」と判断した。
ルシャまで行ってしまうと熊の危険が高いので、その手前で適当な野営地を見つけなければならない。

西に舵をとる。今回、ラダーは付けてこなかったので、実際には舵はないのだが(笑)
ほどなく、海からそびえる巨大なコンクリートの壁が目に入る。
あれがウワサに聞いた文吉湾の防波堤か。大きすぎて異常な風景に見える。
逆に言えば、あれが必要になるぐらいに海が荒れるということか。
幸いにも岬を越えても風も天候も落ち着いたままだ。

結局、文吉湾は素通り。
人は見えなかったが、横の方にドーム型のテントが張ってあるのが見えた。
トレッカーかカヤッカーがいるのだろうか?

獅子岩

このあたりから知床独特の風景が現れ始める。
まずは「獅子岩」だ。
ある角度から見ると、座ったライオンに驚く程似て見える。
裏から見ると、まったくそのように見えないのが不思議。
近くの「窓岩」も綺麗に丸く穴が空いていた。

ずっとロングジョンを着て漕いでいるので、かなり暑い。
ジャケットは着ていないのでTシャツなのだが、腕がかなり日焼けしてきた。
ここまでの好天は予想しなかったので、日焼け止めはない。
海水で冷やしながら漕ぐ。

ポロモイ

寝場所を探してポロモイ川河口へ行ってみる。
河口というよりも滝だった。上陸しようとしたが、岩が大きすぎて危険なため
少し離れた上陸しやすい場所に移動。滝浴びをして生き返る。

ここは、崖が続いているのでヒグマに襲われる感じはしないのだが、
大岩だらけ海岸線にテントが張れるほどのスペースはない。
今日は波が穏やかなので上陸できたが、ちょっとでも荒れたら不可能だろう。
残念ながら、漂流してきたゴミ、それも大物が多い。

3人共だいぶ疲れてきた。今日はもうそろそろいいかな〜という感じ。
アウンモイの番屋に近づいてみる。コンクリート製のスロープがあって上陸は容易。
よくよく見てみると、崖崩れで建物が半分ツブされている。
周りの感じから見るとしばらく使っていないようだ。廃棄されたのかもしれない。

背後の崖がそれほど切り立っていないため、ヒグマの危険はないとは言えないが
広い平らな場所がキープできるので、ここを野営地とする。
沢の水でTシャツやウエットを水洗いして、さっぱりする。

日暮れまでまだ時間があるので昼寝タイム。流れる雲が綺麗だ。
なにげなく海岸線に目を移すと、なにやら動く小さい物体が!
あわてて双眼鏡で眺めると、どうも人間のように見える。それも複数。
近くにフネの姿はないし、もちろん道などあるワケがない。

果たして、トレッキング中の学生さん4人組だった。
装備が凄い。PFD(ライフジャケット)着用で、足下はフェルト地の磯靴。
背負っているザックも 80L 近いと思われる巨大なものだ。

話を聞くと、歩けないトコロは泳いで!渡るそうだ。凄すぎる。
悪天候のため、ルシャで足止めされたおかげで、今日で6日目だと言う。
よくよく見ると4人のうちの1人は女の子だった。
彼らもここでキャンプすることに決めたようだ。
代々サークルで受け継いできたと思われるトラディショナルな3角テントを組み立てるお手並みが鮮やか!

アウンモイの夕陽

オホーツクに沈む夕陽を眺めながら、夕食の準備を始める。
本日のメインディッシュはレトルトカレー。おやぢ3人ではこんなもんだ。
学生さん達は、きちんと満潮線下で焚き火をしている。エライ!
こんなワカモノ達が増えれば日本の未来は平和なのになぁ…

非常に良い気分で眠りにつくことができた。


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