北海道 ツーリングレポート 2000 夏

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第 3 話 : 捕獲


穏やかな相泊の港内を滑るようにフネを進める。
さすがに装備の重さを感じるが、バランス的には問題ない。振り返ると2人の顔も笑っている。
釣り人の視線を浴びつつ湾外へ。少し波がある。
水は冷たく感じない。ProTreck の温度計はあまりアテにならないが20度以上の表示。
気温は30度近いだろう。

少し漕いで、あらためて周りを眺めてみる。
正面に岩場が見える。観音岩だろうか?西伊豆と少し似ているが、背景に迫る山の奥行きが違う。
左の断崖下の狭い岸部分に番屋がへばりつくように建っている。
そして右にはくっきりと国後島が延びている。こうやって見ると本当に大きい。
早くも感動しまくる3人。はるばる来たぜ知床ぉ♪

知床岳

崩れ浜を通過する。知床岳の残雪がよく見える。
南斜面だが、標高 1200m 近いので万年雪になっているのだろう。
番屋はけっこうな密度で建っており、驚いたことにクルマもけっこうある。
一般車は相泊までだが、漁業関係者はもうすこし先まで行けるようだ。

双眼鏡で見ると、昆布干しのバイトと思われるおねいさんも見えたりする。
残念ながら、このあたりは秘境という雰囲気は無い。

海は驚くほど穏やかだ。満載カヤックでもすいすい進む。
透明度はそれほどでもないが、伊豆でも味わったことがないほどのベタ凪。
日光がゆらゆらと反射し、完全に風がやんだ時には鏡のような海面に雲が映る!

ぼーっと漕いでいると、水クラゲがいるのがわかった。
よくよく見ると、居る居る!そこらじゅうクラゲだらけだ。
中にはカツオノエボシ?と思われる 3m ぐらいの長大な触手を持ったヤツもいる。
パドルですくってしまいそうでイヤだなぁ。

一時間ほど漕いで、観音岩を通過。
定置網がけっこうあって、沖に向かって果てしなく延びている。
カヤックならばブイとブイの間のロープの上も抜けられる喫水なのだが、
付着した貝類等でハルを傷つける可能性もあるので、旗が立っている船道を選んで進む。

化石浜で休憩

化石浜の手前で最初の上陸休憩。
ブリアンが吐いた。今日はアルコールは入れてないし、
ほとんどウネリもないので、船酔いというワケでもなさそう。

まだまだ日が高いが、やはり今日のトコロは短めの行程にしよう。

目指すモイレウシ川河口の湾までは、あっと言う間だった。
目印の「タケノコ岩」は南側から見るとよくわからないのだが、北側から見ればそっくり!
湾の奥には砂浜があって、釣り人が結構居た。
しかしフネは見あたらない。この人達はどうやってここまで来たのだ?

その謎はすぐに解けた。エンジン音を轟かせて迎えのフネが来たのだ。
どうやらメジャーな釣りスポットらしい。話を聞くとカラフトマス狙いだそうだ。
ガキんちょも走りまわっている。秘境のイメージはガラガラと崩れていく…

しかし、2階建ての番屋の周りを電線がぐるりと囲んでいるのを発見。
間違いなく熊避けである。少々ビビる。
谷の奥にはいかにも熊が住んでいそうな森が広がっている。
今となっては肝をすえるしかない。テントを設営。

カラフトマスをゲットぉ♪

まだ3時前。日も高い。
ブリアンに胃薬を飲ませテントに残し、林゛さんとオショロコマ釣りに出る。
モイレウシ川は小さい川だ。河口でも渓流の雰囲気。イクラを餌に糸を垂れる。

ちょこまかと釣れるには釣れる。しかし、みな 10〜15cm 程のリリースサイズ。
これではオカズにはならない。ある程度アテにしていたのだが…

ん?ふと見ると石の間にオショロコマとは明らかに違う巨大な背ビレが!?
鮭だ〜!
「川を遡る鮭は禁漁?」というのが頭をかすめるが、こうなっては止まらない。
二人がかりで 30分程の格闘の末、無理矢理タオルで包み込んでゲット!
貴重な蛋白源、悪いがオカズになってもらうぞと。

小振りなメスだった。腹を割くと小さめのイクラがポロポロとこぼれ出る。
さっそく米を炊き、2日連続のイクラ丼に。
身はジャガイモと一緒にバター炒め。うぅぅ新鮮で美味いよう。

思いがけない獲物を得て、満腹になった我々だった。
胃薬が効いたせいか、ゆっくり休めたせいか、ブリアンの体調は戻ってきたようだ。
ニオイのするものを綺麗に洗い、念のためテントから隔離してから寝る。


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